数ある大学の中でも、教育に力を入れている千葉商科大学さん。今回は、千葉商科大学がどんな学生を育成しているのかについて、下記2つの点を中心にインタビューさせていただきました。
- 千葉商科大学とは、何をやっている大学なのか?
- キャリアについてどのように考え、どんなサポートをしているのか?
これから千葉商科大学に入学を検討している高校生や千葉商科大学に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
インタビューに応じてくれた方
川瀬功 さん
千葉商科大学のキャリア支援センター長を務めています。
目次
千葉商科大学とは
──千葉商科大学について教えてください。
千葉商科大学は2028年に創立100周年を迎える、歴史ある大学です。
建学の精神は、商業道徳の涵養です。武士道精神を教育の基本に据え、社会に役立つ実学教育を通じて倫理観の高い実業人を育成することを理念とし、「まっとうな商い」が必要と考えています。
商科大学なので、主な学生の就職先は小売業や卸業です。それ以外は金融、不動産やメーカーへの就職が多いです。最近はIT業界への就職がどんどん増えています。
近年は「社会科学の総合大学」としての基盤固めに大学一丸となって取り組んでいます。実学とは、社会に出て役に立つことに重きを置いた学問です。ビジネスで活躍し、「商いの力」を発揮できる人材を育てていこうと考えています。
デジタル時代の商いの力とは?
──川瀬さんが学生に対して身につけて欲しいと思っているスキルはありますか?
「デジタル時代の商いの力」を、学生の皆さんに身につけてもらえたらいいなと思っています。
有用性の高いITスキルや、Webマーケティングができることはわかりやすい例です。
ただ、商いの力はそれだけではありません。
過去に「“デジタル時代の商いの力”と聞いてどんな力をイメージしましたか?社会で役に立つために何が必要だと思いますか?」ということを、3,000社ほどの企業へアンケート調査したことがあります。
そこで経営者や採用担当者の皆さんが共通しておっしゃっていたのは、「デジタルの先に人がいる」ということです。
デジタルスキルはもちろんあった方がいいけれど、それだけではなかったのです。人と人の中できちんと関係を構築できることがやっぱり大事だということを、皆さん口を揃えておっしゃっていました。
学生の皆さんが “デジタル時代の商いの力” をどのように見つけ、身につけていくのかは今後のテーマだと考えています。
──「これからの時代を本質的に生き抜くために、大学としてどんな教育をしていけばよいのか」を本当に熱心に考えられているんだなと感じました。
社会科学の総合大学に向けて、何に取り組んでいるのか
──社会科学の総合大学に向けて、大学としてどのようなことに取り組まれているのですか?
社会に出て役立つ人材を育てるためには、社会がどのようなことを求めているのかを理解する必要がありますよね。
そこで千葉商科大学では、一般教養科目や簿記などの専門科目のみならず、社会に出て社会から学ぶアクティブ・ラーニングを大切にしています。
一般の企業と連携して企業のプロジェクトに参加したり、商店街の活性化に参加したりなど。地域や社会と接点を持って、大学の中だけではなく、実社会から学んでいくことに力を入れて取り組んでいます。
キャンパスの中にも、アクティブ・ラーニングができる環境が整っています。キャンパス内のブドウ畑でブドウの効率的な栽培について研究したり、養蜂場で養蜂をしたりと、実際に体や手を動かしながら知識や知恵を学んでいくことができます。他にもトリさんカレーというレトルトカレーの開発や販売に携わったりと、さまざまな形で社会やビジネスを体感しています。
私たちは、一般教養科目や簿記などの専門科目での学びに加えて、社会に出て社会から学ぶことも同様に大切だと考えています。社会でどのようなことが求められてくるのかを考える機会を持てるように、継続した支援を行なっています。
大学として特に取り上げていきたい社会との接点と強み
──社会と学びの接点として、大学として特に取り上げていきたい事例がありましたら教えてください。
本学の学長は環境工学分野の出身です。学長が環境問題の専門家ということもあり、大学全体として環境問題には強く意識を持っています。
そういった背景もあり、元々は野球場として使用していた広大な土地を、総工費約7億円をかけて発電所へとリニューアルしました。現在は1万枚以上のパネルが置かれており、大学で使用している電力は実質100%自然エネルギーになっています。
今後は電力だけではなく、ガスなどについても100%内部で賄えるような体制を目指しています。それだけでなく、授業内で環境問題に関するトピックを取り上げるなど、学生さんが知識をつけられるような工夫も行なっています。
環境問題に対しての取り組みを行う学生団体もあり、学生さんが自主的に社会に対して関わっている姿が印象的です。近年取り上げられることの多い「SDGs」についても、人や環境と社会のつながりが根底にあります。環境問題や社会について学び考えることが、社会に出てからの“デジタル時代の商いの力”に繋がってくると思います。
──ありがとうございます。社会との接点や環境問題が「まっとうな商い」とも繋がってきますね!
まっとうな商いのテーマで大学として他に取り組んでいること
──最初に「まっとうな商い」が建学の精神にあるとおっしゃっていました。「まっとうな商い」をテーマに、大学として取り組んでいることを教えてください。
授業の中で「まっとうな商いはこうですよ」というように教えることはありません。学生さんには自らビジネスを体感することで、まっとうな商いの手法を身につけてほしいと思っています。
「ビジネスってこうなんだ、商いってこうなんだ」ということを、学びの中で自然と実感できるのが、先ほどお話ししたアクティブ・ラーニングです。その中で、たとえば商業道徳(商業活動で守るべき道徳)がどこに必要になってくるのかなどを、経験して学んでもらっています。ゼミで教員が取り上げることもありますね。
もちろん先生方によりまちまちですが、教員は環境問題や商業道徳などを意識しながら、日々の研究や教育活動に取り組んでいます。
学生さんが就職活動の中で、そのスキルをアウトプットできるといいなと思っています。
──“デジタル時代”に対しての、大学の考えと活動について教えてください。
内閣府がSociety5.0を打ち出したりと、いわゆるスマート社会が到来すると言われていますね。
国内でも世界でも、このようなスマート社会の中でどうやって戦っていくのか。日々変化を続けるビジネスにどう対応したらよいのか。それを考えたときに、デジタルは欠かせないキーワードでした。
そのような新しい時代を捉えて、大学も変革していく必要があります。本学の開発・提供しているオファー型就活マッチングサイト「me R AI(みらい)」は、デジタル時代を見据えた、私たちの新しい取り組みのひとつです。
社会に生み出したい価値
──これから千葉商科大学は、社会においてどんな価値を生み出していきたいと考えているのかをお伺いしたいです。
私の考えも含めてお伝えします。
デジタル時代の商いの力と言ったとき、”商い”なので近江商人の考え方がとても参考になると思います。近江商人は中世から近代にかけて活動した近江国(現在の滋賀県)出身の商人です。
近江商人の考え方というのは“三方良し”と言われています。「売り手良し、買い手良し、世間良し」の三つの “良し”。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということです。彼らは「世の中を良くする」という精神に基づいた商いをしていました。
大事な考えですよね。本学は地球環境問題に取り組んでいることも大事にしているので、「自分良し、相手良し、社会良し、地球良し」の“四方良し”というところかなと。
そこの理念をきちんとベースに置いてビジネスや仕事をしていくというのは、世の中を良くすることに繋がるかなと今は考えています。
身につけた“デジタル時代の商いの力”を学生さんが就職活動の場でアウトプットできることが理想です。今後は建学の精神にもある「正しい商い」をテーマに、学校やme R AIの中でコミュニケーションできる場があるといいなと思っています。
me R AIとは?
──先ほどから少し、話題となっているme R AIについて教えてください。
me R AI(みらい)は就活生と求人企業の輝く未来を応援するマッチングサイトです。
学生個人と各企業がサイト上に情報を登録し、企業側から採用したい学生にオファーすることができます。また、学生から企業へオファーすることも可能で、学生と企業の相互オファーをすべて「me R AI」のサイト上で行うことができます。
me R AIの立ち上がり
──me R AIが立ち上げたきっかけや背景を教えてください。
就活をしないといけないのに、動けない学生さんが実は結構多いんですよ。大学としては、そういった学生さんにレールを敷いてあげる必要があるなと思いました。
me R AIが立ち上がる前に「ネットでOB訪問」というサイトを立ち上げたんです。
ネットでOBとして活躍する人たちにアポイントを取って、会いに行けるというシステムです。学生さんにとってOB訪問がより身近になることを期待していましたが、これがコミュニティとしてなかなか活性化しませんでした。
そこで、就活のポータルサイトをイメージした新しい上位サイトを作ろうということになりました。しかし、同様のサイトは「リクナビ」さんや「マイナビ」さんなど、他にもたくさんあります。どのようなポータルサイトを作ったら学生さんが見てくれるのか、というイメージは、その段階ではまだついていませんでした。
たまたまその年の前年に学内合同説明会があり、その説明会に着目したことがme R AIの生まれるきっかけになりました。
320名の学生が事前に履歴書を準備し、3,40社の人事の方がそれらの履歴書に目を通します。私は、正直320名分も見られないだろうと思っていました。しかし実際は、人事の方は2時間前に会場にきて全員分のプロフィールをチェックしたり、なんらかの形で履歴書に目を通していたんですよね。とても大変そうでした。
もし、オファー型のサイトがあれば、会場2時間前に人事の方が会場に来なくても事前に企業と学生とのタッチポイントを作ることができます。また学生さんの立場からしても、毎回履歴書を作らずに、ネットに自分のPRを載せることができます。
そこで、学生と企業が自由に連絡を取れれば採用の効率化が図れると考え、ポータルサイトではなく、オファー型のマッチングサイトme R AIが生まれました。今では、学生さんと企業の方に便利に活用していただいています。
力を入れている会計などに関して
──千葉商科大学では会計に関する教育にも力を入れていると聞きました。どのようなことをやっているのかお伺いしたいです。
千葉商科大学は元々商経学部が母体となっている大学です。
現在1学年で1500名ぐらい学生さんがいて、その中で半数以上となる800名ほどを商経学部の学生さんが占めています。
その商経学部では簿記の授業が必須になっています。学生さんは簿記2級や1級、あるいは会計士資格、税理士資格を取るために自分自身でも学習を進めています。
自学自習の雰囲気から、瑞穂会という任意の勉強団体も立ち上がりました。
実は、商経学部のみならず毎年300名ぐらいの学生さんが瑞穂会に所属しています。放課後や土日、長期休みなどを使って、学生さんが自主的に勉強しています。
──任意でも毎年300名ですか!?すごいですね!
日商簿記検定2級講座や税理士試験の講座など、大学としても幅広い講座を準備して、学生さんをサポートしています。
実は本学に入ってくる高校生の中には、瑞穂会があるので入学を決めましたと口にする方もいらっしゃいます。商業高校あたりでは結構知られているようです。
この時間にも瑞穂会で勉強している学生がたくさんいると思います。
特に簿記1級のコースの学生さんは相当勉強している様子です。去年は4年生で簿記1級を取った学生さんがいましたが、夏休みも毎日勉強していて、講座の受講が終わってから「これでやっと夏休みをとれる」と口にしていました。
これは企業の方々に話をすると、「そんな学生いませんからね」と大変驚かれます。
瑞穂会は、全国大学対抗簿記大会(主催:資格の大原 大原大学院大学)では団体戦で11連勝していました。個人戦でも優勝や入賞する学生さんが多くいらっしゃいます。毎年入賞や優勝が当たり前なので、瑞穂会に入っている学生さんは、「自分たちの代で負けられない!」というものすごいプレッシャーを感じているそうです。
メディアをみている方に一言
──最後にこの記事をご覧になっている方に対して、川瀬さんの方から一言いただけたらと思います。
千葉商科大学は90年以上の歴史があって、OBもたくさんいらっしゃいます。いろんな会社で本学のOBが活躍しています。
その中でも昔から「部下に持つなら千葉商大」というふうに言われているのが、本学の特筆すべき点だと思います。真面目で人柄が良くて、素直な学生が多いです。そういう学生さんが社会に出ていって活躍しています。
本学では人の良い学生さんがいっぱいいる中で勉強することができます。いい友人もできることでしょう。人との関わりは、就活にも有利にはたらきます。豊かな人と豊かな環境で勉強したい方は、ぜひ本学を目指してみてほしいなと思います。
──学生思いで、やる気のある学生が多く在籍している千葉商科大学の魅力に惹かれました。本日は長いお時間取材をさせていただきありがとうございました。